シニアの骨はなぜもろくなる? 骨折を防ぐ生活習慣
シニアの骨の健康について
年を重ねると、体のさまざまなところに変化が現れます。骨も例外ではありません。骨がもろくなると、ちょっとしたことで骨折しやすくなり、その後の生活に大きく影響することもあります。
ここでは、シニア世代の骨の健康について、よくある疑問にQ&A形式でお答えします。骨を強くするために、毎日の生活でできることを知って、元気な体を保ちましょう。
Q1: なぜ年を取ると骨がもろくなるのですか?
A1: 骨は常に作り替えられていますが、年を重ねると、この作り替えのバランスが崩れやすくなるためです。特に女性は、女性ホルモンの減少も大きく関係しています。
詳しい解説
骨は、私たちが生きている間、常に古い骨を壊し、新しい骨を作るという作業を繰り返しています。これを「骨のリモデリング」と呼びます。若い頃はこのバランスが取れていて、骨は丈夫に保たれます。
しかし、年を取ると、新しい骨を作る力が弱くなったり、古い骨を壊す力が強くなったりして、骨全体の量が減り、密度が低くなってしまいます。これが「骨がもろくなる」状態です。
特に女性は、閉経後に骨を守る働きのある女性ホルモンが大きく減るため、骨がもろくなりやすい傾向があります。
また、次のようなことも骨がもろくなる原因となります。
- カルシウムやビタミンDなど、骨を作るのに必要な栄養が不足している。
- 運動する機会が減り、骨への刺激が少なくなる。
- 病気や薬の影響。
骨がもろくなる病気は「骨粗しょう症(こつそしょうしょう)」と呼ばれます。
Q2: 骨を強くするために、普段の生活でできることはありますか?(食事編)
A2: 骨を作る材料となるカルシウムや、そのカルシウムの吸収を助けるビタミンDを意識して食事に取り入れることが大切です。
詳しい解説
骨を強くするためには、バランスの取れた食事が基本です。特に、骨の材料となるカルシウムと、カルシウムが体に吸収されるのを助けるビタミンDは重要です。
カルシウムを多く含む食品の例:
- 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
- 干しエビ、しらす干し、煮干しなどの小魚
- 豆腐、納豆、油揚げなどの大豆製品
- 小松菜、大根の葉、ひじきなどの緑黄色野菜や海藻類
これらの食品を毎日の食事に少しずつ取り入れてみましょう。例えば、朝食に牛乳やヨーグルト、夕食に魚料理や豆腐料理、おひたしなどを加えるといった工夫ができます。
ビタミンDを多く含む食品の例:
- 鮭、いわし、さんまなどの魚類
- 干ししいたけ(使う前に水で戻します)やきくらげなどのきのこ類
また、ビタミンDは日光を浴びることでも体内で作られます。日中に少しの時間、外を散歩したり庭の手入れをしたりするだけでも、ビタミンDを作る助けになります。
特定の食品に偏らず、様々な食材を組み合わせたバランスの良い食事を心がけましょう。
Q3: 骨を強くするために、どんな運動をすれば良いですか?(運動編)
A3: 骨に軽い刺激を与えるような、無理のない範囲での運動がおすすめです。体を動かすことは、筋肉を保ち、転倒を防ぐためにも役立ちます。
詳しい解説
骨は、適度な重みや衝撃が加わることで強くなる性質があります。特別な運動ではなく、普段の生活でできる簡単な動きでも効果が期待できます。
骨を強くするのに役立つ運動の例:
- 散歩やウォーキング: 地面を踏みしめる際に骨に軽い刺激が加わります。背筋を伸ばして、少し速めに歩くのがおすすめです。
- 軽いジョギング: ウォーキングよりも強い刺激になりますが、無理のない範囲で行いましょう。
- 踏み台昇降: 階段や低い台を上り下りする運動です。自宅で手軽にできます。
- かかと落とし: つま先立ちになって、ストンとかかとを下ろす運動です。手軽に骨に刺激を与えられます。壁などに手をついて安全に行いましょう。
これらの運動は、毎日少しずつでも続けることが大切です。急に無理な運動を始めると、体を痛める原因になりますので注意してください。運動の前には軽い準備体操を、運動中や後には水分補給を忘れないようにしましょう。
また、椅子に座って行う体操や、横になって手足を動かすだけでも、筋肉を保ち、体の機能を維持するのに役立ちます。ご自身の体調や体力に合わせて、できることから始めてみてください。
Q4: 骨粗しょう症は、放っておくとどうなりますか?
A4: 骨が非常にもろくなり、少しの衝撃や転倒で骨折しやすくなります。特に背骨や太ももの付け根の骨折が多く見られます。
詳しい解説
骨粗しょう症が進行すると、骨の中がスカスカになったような状態になり、骨の強度が著しく低下します。すると、立ち上がろうとしたり、くしゃみをしたりといった些細な動きでも、背骨が潰れるように骨折(圧迫骨折)することがあります。
また、転倒した際には、手首、肩、そして特に太ももの付け根(大腿骨近位部)を骨折しやすくなります。太ももの付け根の骨折は、多くの場合手術が必要となり、入院やリハビリテーションを経て回復を目指しますが、残念ながら寝たきりの原因となることも少なくありません。
骨折を防ぐことは、ご自身の活動的な生活を守るために非常に重要です。骨粗しょう症は自覚症状がないまま進行することが多いため、「いつの間にか骨折」していることもあります。定期的な健康チェックで骨の状態を知ることが大切です。
Q5: 骨の健康について、いつ専門医に相談すれば良いですか?
A5: 健康診断で骨密度が低いと指摘された場合や、ご自身の体調で気になる変化がある場合は、一度専門医に相談してみましょう。
詳しい解説
骨の健康状態は、見た目だけでは分かりにくいことが多いです。次のような場合は、早めに整形外科などの専門医に相談することをおすすめします。
- 健康診断や人間ドックで「骨密度が低い」と指摘された。
- 以前と比べて身長が縮んだ、または背中が丸くなったと感じる。
- 軽い転倒や尻もちで骨折した経験がある。
- ご家族に骨粗しょう症の方がいる。
- 閉経後の女性で、骨の健康に不安がある。
専門医では、骨密度検査などを行い、骨の状態を詳しく調べることができます。検査結果に基づいて、食事や運動のアドバイスを受けたり、必要であればお薬による治療を検討したりすることができます。
骨粗しょう症は、早く対策を始めるほど、骨折を防ぐ効果が期待できます。気になることがある場合は、一人で悩まずに専門家に相談してみてください。
まとめ
シニア世代にとって、骨の健康を守ることは、活動的な毎日を送り続けるためにとても大切です。骨がもろくなるのは、加齢による体の変化や、食事、運動などの生活習慣が関係しています。
毎日の食事でカルシウムやビタミンDをしっかり摂ること、そして散歩や軽い体操などで骨に刺激を与えることは、骨を強くするためにとても有効な方法です。できることから少しずつ、無理なく続けてみましょう。
また、骨粗しょう症は、進行すると骨折のリスクが高まります。ご自身の骨の状態が気になる場合や、健康診断などで指摘を受けた場合は、放置せずに専門医に相談することが大切です。適切な診断とアドバイスを受けることで、骨の健康を守り、骨折を防ぐことにつながります。
この記事が、皆様の骨の健康を守るための一助となれば幸いです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療法を示すものではありません。ご自身の健康状態にご不安がある場合は、必ず専門医の診断を受けてください。