口がカラカラする? シニアのドライマウス、原因と自分でできること
「最近、口が乾きやすくなった」「話しづらい」「食べ物が飲み込みにくい」と感じることはありませんか? 口の渇きは、年齢を重ねると起こりやすい体の変化の一つです。 「ドライマウス」とも呼ばれ、日々の生活に影響が出ることがあります。 この記事では、シニア世代に多い口の渇きの原因や、ご自宅でできる簡単なケア、そして医療機関に相談する目安についてお答えします。
Q1:なぜ口が乾くのですか?
A1:いくつかの原因が考えられます。
年齢を重ねると、唾液を出す腺の働きが少し弱まることがあります。 また、飲んでいるお薬の種類や、体の病気が原因で口が乾きやすくなる場合もあります。 水分が足りていなかったり、ストレスを感じていたりすることも関係します。
詳しい解説:口が乾く主な原因
口の渇き(ドライマウス)には、様々な原因が考えられます。
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加齢による体の変化
- 年齢とともに、唾液をつくる場所(唾液腺といいます)の働きが、若い頃より少し低下することがあります。
- 唾液の量や質が変わることが、口の渇きにつながることがあります。
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飲んでいるお薬の影響
- 高血圧のお薬、精神安定剤、睡眠薬、アレルギーのお薬など、多くのお薬には口を乾きやすくする性質があるものがあります。
- もしお薬を飲み始めてから口の渇きが気になり始めた場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみてください。自己判断でお薬をやめたり、量を変えたりするのは危険です。
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病気の影響
- 糖尿病、シェーグレン症候群(唾液腺や涙腺などが乾燥する病気)、腎臓の病気など、全身の病気が原因で口が乾くことがあります。
- また、口呼吸をしていると、口の中が乾きやすくなります。鼻炎や副鼻腔炎などで鼻が詰まっている方は、口呼吸になりやすいかもしれません。
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生活習慣やその他の要因
- 水分をあまり摂らない。
- 喫煙の習慣がある。
- ストレスや緊張が続いている。
- 入れ歯が合っていない。
これらの原因が一つだけでなく、いくつか重なって口の渇きを感じる方もいらっしゃいます。
Q2:口が乾くと、どんな困ったことがありますか?
A2:日常生活の色々な場面で不便を感じることがあります。
唾液は、お口の中を健康に保つためにとても大切な役割をしています。 唾液が少なくなると、食べたり話したりしづらくなったり、お口のトラブルが起きやすくなったりします。
詳しい解説:唾液の大切な役割と、唾液が減ったときの影響
唾液には、主に次のような働きがあります。
- 食べ物を飲み込みやすくする
- 食べ物を湿らせて、噛んだり飲み込んだりしやすくします。
- 味を感じやすくする
- 食べ物の味のもとを溶かして、舌の味を感じる場所(味蕾)に届ける手助けをします。
- お口の中をきれいに保つ
- 食べ物の残りカスや細菌を洗い流してくれます。
- 虫歯や歯周病から守る
- 歯を強くする成分を含んでいたり、酸を中和したりして、虫歯になりにくくします。
- 歯ぐきなどの粘膜を守り、口内炎などができにくくします。
- 消化の手助け
- 食べ物の消化を少しだけ手伝います。
唾液が少なくなると、これらの働きが弱まるため、次のような困ったことが起こりやすくなります。
- 食べたり、飲み込んだりしにくい
- 特にパサパサしたものや乾いたものが食べにくくなります。
- 話しにくい
- 舌や唇が乾いて、言葉がスムーズに出にくくなります。
- 味が分かりにくい、味が変わったように感じる
- お口の中がネバネバしたり、舌がピリピリしたりする
- 口内炎や唇の端が切れる(口角炎)ができやすい
- 虫歯になりやすくなる
- 歯周病が悪化しやすくなる
- 口臭が気になる
- 入れ歯が外れやすい、入れ歯が擦れて痛い
このように、口の渇きは、単に不快なだけでなく、お口の健康や全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。
Q3:自分でできる対策はありますか?
A3:はい、ご自宅でできるケアや生活習慣の見直しで、症状が和らぐことがあります。
水分をこまめに摂ったり、唾液が出やすくなるように口の体操をしたりすることが有効です。
詳しい解説:ご自宅で試せるケア方法
すぐに試せる具体的なケア方法をいくつかご紹介します。
1. こまめな水分補給
- 一度にたくさん飲むのではなく、少量を頻繁に飲むように心がけましょう。
- 水やお茶(カフェインの少ない麦茶やほうじ茶など)が良いでしょう。
- コーヒーやアルコールは、かえって口を乾燥させることがあるので、飲みすぎには注意が必要です。
- うがい薬の中にはアルコールが含まれているものがあり、乾燥を招く場合があります。成分を確認しましょう。
2. 唾液腺マッサージ
唾液腺とは、唾液を作る場所のことです。優しくマッサージすることで、唾液が出やすくなります。
- 耳下腺(じかせん):耳たぶの少し前、上の奥歯のあたりにあります。
- 人差し指から小指までの4本を頬に当て、後ろから前に向かって優しく円を描くように回します。(10回程度)
- 顎下腺(がっかせん):あごの骨の内側、やわらかい部分にあります。
- あごの骨の内側に指を当て、耳の下からあごの先に向かって、指を数カ所にずらしながら優しく押します。(各5回程度)
- 舌下腺(ぜっかせん):あごの真下、舌の付け根のあたりにあります。
- 両手の親指をそろえ、あごの真下に当て、舌を押し上げるように優しく上に押します。(10回程度)
マッサージは、食前に行うと、食事がしやすくなります。 強い力で押さず、気持ち良いと感じるくらいの力で行いましょう。
3. 口の体操(舌の体操)
舌や口の周りの筋肉を動かすことで、唾液の分泌を促したり、飲み込む力を保ったりするのに役立ちます。
- 舌を前に突き出したり、口の中で上下左右に動かしたりします。
- 舌で頬の内側を押したり、舌先で歯ぐきをなぞったりします。
- 「パ」「タ」「カ」「ラ」などの発音を繰り返すのも、口周りの良い運動になります。
4. お口を保湿するグッズの利用
薬局などでは、口の渇きを和らげるための様々な商品が販売されています。
- 保湿効果のある洗口液(うがい薬)
- 保湿スプレーやジェル
- 人工唾液:唾液に近い成分で作られており、一時的に口の中を潤します。
- キシリトール入りのガムやキャンディー:噛むことで唾液の分泌を促します。(砂糖が入っていないものを選びましょう)
これらの商品は、症状を一時的に和らげるためのものです。使用方法をよく読んで使いましょう。
5. 生活習慣の見直し
- 口呼吸を鼻呼吸にする:鼻が詰まっている場合は、耳鼻咽喉科などに相談してみましょう。
- お部屋の湿度を保つ:特に冬場やエアコンを使う時期は、加湿器などで適切な湿度(50~60%)を保ちましょう。
- タバコやアルコールを控える:これらは口の中を乾燥させやすくします。
- よく噛んで食べる:しっかりと噛むことで唾液が出やすくなります。
- ストレスを溜め込まないようにする:リラックスできる時間を作りましょう。
Q4:どんな時に病院に行った方が良いですか?
A4:自分で対策しても改善しない場合や、他の症状がある場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
口の渇きの背景に、治療が必要な病気が隠れていることもあります。
詳しい解説:医療機関への相談の目安
次のような場合は、一度専門家に相談してみましょう。
- 上で紹介したような自分でできる対策を試しても、口の渇きが改善しない。
- 口の渇きが急にひどくなった。
- 食べたり飲み込んだりすることが非常に困難になった。
- 口の中のネバネバがひどく、話しにくい。
- 口内炎が頻繁にできる、治りにくい。
- 口の渇きの他に、目の乾燥、関節の痛み、微熱、疲れやすいといった他の症状もある。
- 現在飲んでいるお薬について相談したい。
どこに相談すれば良いですか?
- まずはかかりつけの歯科医院に相談してみるのが良いでしょう。口の中の状態を見てもらい、アドバイスを受けることができます。
- 口の渇きが病気に関係しているかもしれない、と感じる場合は、内科や口腔外科、耳鼻咽喉科などが考えられます。
- 現在治療中の病気があり、口の渇きがお薬の副作用かもしれない場合は、その病気を診てもらっている医師に相談してください。
専門家にご自身の状態を詳しく伝えることで、適切な診断や治療、ケアの方法が見つかる可能性があります。一人で悩まずに、相談してみてください。
まとめ:口の渇き(ドライマウス)と上手に付き合うために
シニア世代の口の渇き(ドライマウス)は、様々な原因で起こりますが、日々のケアや生活習慣の見直しで症状が和らぐことがあります。 こまめな水分補給、唾液腺マッサージや口の体操、保湿グッズの活用などを試してみてはいかがでしょうか。
もし、ご自身でできる対策を試しても症状が良くならない場合や、気になる症状がある場合は、遠慮なく歯科医院やかかりつけ医など、専門の医療機関に相談してください。 お口の健康は、体の健康にもつながります。上手にケアしながら、快適な毎日を過ごしましょう。