食べ物や飲み物が飲み込みにくい? シニアの飲み込みのトラブル、原因と自分でできる対策
シニアの体と心の健康相談室です。
年齢を重ねると、「最近、食べ物や飲み物をうまく飲み込めない」「食事中にむせることが増えた」と感じることがあるかもしれません。これは「嚥下(えんげ)」と呼ばれる、食べ物や飲み物を口から胃へ送り込む働きに関係するトラブルです。
今回は、シニア世代に起こりやすい飲み込みのトラブルについて、その原因と、ご家庭でできる対策をご紹介します。
Q1: 最近、食べ物や飲み物が飲み込みにくく、むせやすくなりました。どうしてでしょうか?
A1: 加齢や体の変化が原因の一つとして考えられます。
詳しい解説:
食べ物や飲み物を安全に飲み込むためには、お口やのど、食道の筋肉や神経が連携して働く必要があります。この一連の動きを「嚥下」と言います。
年齢を重ねると、体全体の筋力が少しずつ衰えるように、飲み込みに関わる筋肉の働きも弱くなることがあります。また、食べ物がのどを通る時の感覚が鈍くなることもあります。
これらの変化によって、食べ物や飲み物が気管の方に入りやすくなり、むせることが増えたり、飲み込みに時間がかかったりすることがあります。
さらに、過去に脳卒中を経験された方や、パーキンソン病などの病気、あるいは入れ歯の状態が合わないことなどが原因で、飲み込みの機能に影響が出る場合もあります。
「なぜむせるのか」「なぜ飲み込みにくいのか」を正しく知るためには、一度専門医に相談することが大切です。
Q2: 飲み込みやすくするために、家でできることはありますか?
A2: 食事の時のちょっとした工夫や、飲み込みに関わる簡単な体操が役に立つことがあります。
詳しい解説:
ご家庭で安全に食事をするために、いくつか試せる工夫があります。
1. 食事の時の姿勢を工夫する
- 食事をする時は、椅子に深く腰かけ、背筋を軽く伸ばす姿勢が良いでしょう。
- あごを少しだけ引くようにすると、食べ物が誤って気管に入りにくくなります。
- テーブルと体の間に隙間があまりできないように、椅子を近づけて座りましょう。
- ベッドなどで食べる場合は、上半身をなるべく起こして(目安:30度以上)、完全に横にならないようにしましょう。
2. 食事の形態や温度を工夫する
- やわらかく調理したり、細かく刻んだり、とろみをつけたりすると、飲み込みやすくなることがあります。
- パサパサするもの、口の中でまとまりにくいもの(例:きゅうり、豆、海苔など)はむせやすい場合があります。
- サラサラした液体(例:水やお茶)は、急いで飲むと気管に入りやすいため、市販の「とろみ剤」を使って、適度なとろみをつけることも有効です。とろみ剤を使う場合は、製品の説明書をよく読んで使いましょう。
- 冷たいものより、温かいものの方が飲み込みやすいと感じる方もいます。
3. 一口量と食べるスピードに注意する
- 一度に口に入れる量を少なくしましょう。
- 急がず、ゆっくりと、よく噛んで食べましょう。
- 口の中に食べ物がある間は、おしゃべりを控えましょう。
- 食べ終わった後も、すぐに横にならず、しばらく座っているようにしましょう。
4. 飲み込みに関わる簡単な体操
食事の前などに、お口やのどの筋肉を動かす簡単な体操をすることで、飲み込みの準備ができます。
- 首の体操: 首をゆっくりと左右に倒したり、回したりします。
- 肩の体操: 肩を上げてストンと下ろしたり、前回し、後ろ回しをしたりします。
- 口の体操: 唇をしっかりと閉じたり開いたり、「イー」「ウー」の形をしたり、頬を膨らませたりへこませたりします。
- 舌の体操: 舌を前に突き出したり、口の中で上下左右に動かしたり、上あごにつけたりします。
- 発生練習: 「パ・タ・カ・ラ」と、それぞれの音をできるだけはっきり、繰り返して言ってみましょう。「パ」は唇、「タ」は舌の前、「カ」は舌の奥、「ラ」は舌全体を使います。
これらの体操を行う際は、無理のない範囲で、呼吸を止めずに行いましょう。
Q3: どんな時に病院に行った方が良いですか?
A3: むせ込みがひどい、食事量が減ったなど、気になる症状がある場合は専門医に相談してください。
詳しい解説:
飲み込みにくさやむせ込みが続くと、食事が十分にとれなくなり、体の栄養が足りなくなったり、体力が落ちたりすることがあります。
また、食べ物や飲み物が繰り返し気管に入ると、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という肺炎を起こす原因になることがあります。
以下のような症状が見られる場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
- 食事のたびに激しくむせる、または頻繁にむせる
- 食事に時間がかかるようになり、食べる量が減ってきた
- 食事中に声がガラガラする、または食後に声がかすれる
- 食べ物や飲み物が逆流してくる感じがする
- 体重が減ってきた
- 肺炎を繰り返すことがある
どこに相談したら良いか分からない場合は、かかりつけ医に相談するか、耳鼻咽喉科、または「嚥下外来」を設けている病院を探してみるのも良いでしょう。専門家(医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士など)に相談することで、原因を調べ、適切なアドバイスや専門的なリハビリテーションを受けることができます。
まとめ
シニア世代の飲み込みのトラブルは、加齢に伴う体の変化など様々な原因で起こります。日々の食事の工夫や簡単な体操を取り入れることで、症状が和らぐこともあります。
しかし、症状が続く場合や、むせ込みがひどい、食事が十分に摂れないといった場合は、必ず専門医に相談しましょう。適切な診断とアドバイスを受けることが、安全で快適な食生活を続けるために大切です。