最近、耳が聞こえにくくなった気がする? シニアの耳の聞こえの変化、原因と生活の工夫
「なんだか最近、以前より耳が遠くなったように感じる」「テレビの音が聞き取りにくくなった」と感じることはありませんか。
耳の聞こえの変化は、シニア世代で多くの方が経験することです。聞こえにくさをそのままにしておくと、人との会話が難しくなったり、テレビやラジオを楽しめなくなったりして、生活に影響が出ることもあります。
今回は、シニア世代の耳の聞こえの変化について、その原因や、ご家庭でできる工夫、そしてどんな時に専門医に相談すると良いかをお話しします。
Q1:最近、耳が聞こえにくくなった気がします。どうしてでしょうか?
A1:年齢を重ねたことや、耳垢など、いくつかの原因が考えられます。
耳の聞こえが悪くなる原因は一つだけではありません。最も多いのは、年齢を重ねることによる変化ですが、それ以外の理由で聞こえにくくなっていることもあります。
詳しい解説
耳の聞こえは、音が耳に入ってきて、その音を脳で理解することで成り立っています。この仕組みのどこかに問題が起きると、聞こえが悪くなります。
シニア世代で最も多い聞こえの変化は、「加齢性難聴(かれいせいなんちょう)」と呼ばれるものです。これは病気ではなく、年齢とともに体の機能が少しずつ衰えるのと同じように、耳の機能も自然に衰えてくることで起こります。
例えるなら、長い間使っている電球がだんだん暗くなってくるように、耳の中で音を感じ取る役割をしている部分(有毛細胞といいます)の働きが、ゆっくりと弱まっていくイメージです。
加齢性難聴の特徴としては、
- 高い音が聞き取りにくくなる
- 女性や子どもの声、電話の呼び出し音などが聞こえにくく感じることがあります。
- 静かな場所では聞こえるが、騒がしい場所では聞き取りにくい
- 周りがうるさいと、話している人の声だけを聞き分けるのが難しくなります。
- 声は聞こえるが、何を言っているか言葉が分かりにくい
- 「あ」と「か」、「さ」と「た」のような、似たような音の区別がつきにくくなることがあります。
加齢性難聴は、残念ながら今のところ完全に治すことは難しいとされています。しかし、進行を遅らせたり、聞こえを補ったりするための方法があります。
加齢以外にも、聞こえが悪くなる原因としては、
- 耳垢が溜まっている
- 耳の穴に耳垢が詰まって、音が通りにくくなっている場合があります。
- 中耳炎などの病気
- 耳の中に炎症が起きたり、水が溜まったりする病気でも、一時的に聞こえが悪くなることがあります。
- メニエール病など
- めまいと一緒に聞こえが悪くなる病気もあります。
このように、聞こえの変化には様々な原因が考えられます。自己判断せず、専門医に相談することが大切です。
Q2:聞こえにくい時、家でできることはありますか?
A2:コミュニケーションの仕方を工夫したり、耳のケアに気をつけたりすることで、聞こえにくさを少しでも楽にできる場合があります。
聞こえにくさを完全に解消できなくても、日常生活の中でちょっとした工夫をすることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、快適に過ごせたりすることがあります。
詳しい解説
ご自身やご家族、周りの方ができる工夫には、次のようなものがあります。
<聞こえにくい方と話す時の工夫>
聞こえにくい方がいる場合、話す側が以下のような点に気をつけると、よりスムーズに会話ができます。
- 話すスピードをゆっくりにする
- 早口にならず、落ち着いて話しましょう。
- はっきり、滑舌良く話す
- 大声を出す必要はありません。一つ一つの言葉を丁寧に発音するイメージです。
- 相手の顔を見て話す
- 口の動きや表情が見えると、言葉が聞き取りやすくなります。
- 静かな場所で話す
- テレビを消すなど、できるだけ周りの騒音をなくしましょう。
- 一文を短く区切って話す
- 長い文をまとめて話すより、短い文で区切りながら話す方が分かりやすいです。
- 必要に応じて、書いて伝える(筆談)
- どうしても聞き取れない言葉がある時などは、紙に書いて見せるのも有効です。
<聞こえにくい方自身ができる工夫>
ご自身が聞こえにくいと感じる場合、周りの人に理解してもらうことも大切です。
- 「少し耳が遠くなったので、ゆっくり話してもらえませんか」など、周りの人に伝えてみる
- 遠慮せずに伝えることで、相手も話し方を工夫してくれます。
- 聞き取れなかった時は、遠慮せずに「もう一度お願いします」と聞き返す
- 分かったふりをせず、しっかりと聞き返すことで誤解を防げます。
- テレビやラジオの音量を上げすぎないように気をつける
- ご家族など、一緒に住んでいる方がいる場合は、音量が大きすぎると迷惑になることがあります。字幕機能を活用するのも良いでしょう。
- 耳の穴の入り口近くの耳垢を優しく取り除く
- ただし、耳垢を奥に押し込んでしまわないように、綿棒などを奥に入れすぎないことが非常に重要です。ご自身で行うのが難しい場合は、専門医に相談しましょう。
これらの工夫は、聞こえにくさの程度や原因によって効果が異なります。
Q3:どんな時に病院に行った方が良いですか?
A3:突然聞こえなくなった場合や、生活に大きな支障が出ている場合は、早めに専門医(耳鼻咽喉科)に相談することをおすすめします。
聞こえの変化を感じたら、一度専門医に相談することが非常に大切です。原因を調べてもらい、適切なアドバイスや治療、補聴器の相談などをすることができます。
詳しい解説
特に、以下のような場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
- ある日突然、片方の耳、または両方の耳がほとんど聞こえなくなった
- これは「突発性難聴」など、早く治療が必要な病気の可能性があります。
- 聞こえにくさと一緒に、キーン、ジーといった耳鳴りがひどくなった
- 耳の聞こえが悪くなるのと同時に、耳が痛い、耳から何か汁が出る(耳だれ)といった症状がある
- 聞こえにくさや耳鳴りと一緒に、ぐるぐる回るようなめまいがある
これらの症状は、加齢性難聴とは異なる病気が原因である可能性があり、早期の診断と治療が重要になる場合があります。
また、急な変化でなくても、以下のような場合は専門医への相談を検討しましょう。
- 少しずつだが、確実に聞こえにくさが進んできたと感じる
- 家族や友人との会話が難しくなり、人と話すのがおっくうになってきた
- テレビやラジオの音が聞き取りにくく、楽しめなくなった
- 補聴器に興味がある、または補聴器が合うかどうか知りたい
専門医に相談することで、聞こえにくさの原因を詳しく調べてもらえます。耳垢が詰まっているだけであれば、簡単に取り除いてもらうことで聞こえが改善することもあります。
加齢性難聴の場合でも、聞こえの程度を正確に測ってもらい、日常生活での具体的なアドバイスや、必要に応じて補聴器についての詳しい説明を受けることができます。補聴器は、専門医と相談しながらご自身の聞こえに合ったものを選ぶことが大切です。
まとめ
耳の聞こえの変化は、年齢とともに起こりうる自然な変化の一つです。しかし、中には病気が原因の場合もありますし、聞こえにくさをそのままにしておくと、日々の生活や人との関わりに影響が出てしまうこともあります。
「年のせいかな」とあきらめずに、まずは耳鼻咽喉科の専門医に相談してみてください。原因を知り、適切な対策や工夫を行うことで、より快適な毎日を送ることにつながります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状に対する診断や治療法を示すものではありません。ご自身の症状については、必ず専門医にご相談ください。