肌がかゆい、カサカサする? シニアの皮膚トラブル、原因と毎日のお手入れ
シニアの皮膚のかゆみや乾燥、どうして? 原因と毎日のお手入れ
年齢を重ねるとともに、「肌がかゆい」「カサカサして粉をふく」といった皮膚の悩みを抱える方が増えてきます。このような皮膚のトラブルは、どうして起こるのでしょうか。そして、日々の生活でどんなことに気をつければ良いのでしょうか。
ここでは、シニア世代に起こりやすい皮膚のかゆみや乾燥について、その原因とご自宅でできるお手入れの方法を分かりやすく解説します。
Q. なぜ、年齢を重ねると肌がかゆくなったり乾燥したりしやすいのですか?
A. 年齢とともに肌の水分や油分が減り、肌を守る力が弱くなるためです。
詳しい解説
私たちの肌は、一番外側にある「角層」という部分が、水分を保ち、体の内側を乾燥や外部からの刺激から守っています。この角層は、水分と皮脂(天然の油分)のバランスが保たれることで、健康な状態を保っています。
しかし、年齢を重ねると、肌の機能が少しずつ変化してきます。
- 肌の水分を保つ力が弱くなる: 肌の角層にある「セラミド」などの保湿成分が減り、水分を蓄えておく力が低下します。
- 皮脂や汗の量が減る: 肌の表面を覆って乾燥や刺激から守る皮脂や汗の量が減ります。
- 肌のバリア機能が低下する: これらの変化により、肌の一番外側で体を守っている「バリア機能」が弱まります。
バリア機能が弱まると、肌の水分が逃げやすくなり乾燥が進みます。また、外部からのわずかな刺激(衣類が擦れる、お湯が熱すぎるなど)にも敏感になり、かゆみを感じやすくなります。これが、シニア世代で皮膚のかゆみや乾燥が起こりやすくなる主な理由です。
Q. 肌のかゆみや乾燥を防ぐために、日々の生活でどんなことに気をつければ良いですか?
A. 入浴方法や保湿など、毎日のお手入れがとても大切です。
詳しい解説
肌のかゆみや乾燥には、毎日の丁寧なお手入れが効果的です。特に以下の点に気をつけてみましょう。
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入浴の工夫
- お湯の温度: 熱すぎるお湯(42℃以上など)は、肌の油分を必要以上に洗い流してしまい、乾燥を悪化させることがあります。少しぬるめのお湯(38℃~40℃くらい)にゆっくり浸かるのがおすすめです。
- 石鹸の使い方: 石鹸は、体を洗うために必要な油分まで取ってしまうことがあります。使う量を控えめにし、よく泡立てて、優しく洗うようにしましょう。全身を毎日石鹸でゴシゴシ洗う必要はありません。乾燥しやすい部分は、お湯で流すだけでも十分な場合があります。
- 洗い方: ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦ると、肌を傷つけバリア機能をさらに弱めてしまいます。手のひらや柔らかい木綿のタオルで、泡を使って撫でるように優しく洗いましょう。
- 入浴後の拭き方: タオルでゴシゴシ擦らず、肌に軽く押し当てるようにして水分を吸い取りましょう。
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毎日の保湿
- 保湿剤を使うタイミング: 入浴後、体が温まっているうち(できれば10分以内)に保湿剤を塗るのが効果的です。肌がまだ少し湿っている状態で塗ると、水分を閉じ込めやすくなります。
- 保湿剤の選び方: 自分の肌に合うものを選びましょう。最初はサンプルやお試しサイズで試してみるのも良い方法です。病院で処方される保湿剤もありますので、かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。
- 保湿剤の塗り方: 乾燥しやすい腕や足、背中などを中心に、体の広い範囲に塗りましょう。ケチらずに十分な量を使うことが大切です。肌に優しくなじませるように塗り、擦り込まないように注意してください。
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衣類の選び方
- 肌に直接触れる下着や衣類は、チクチクする素材や刺激の強いものは避け、柔らかい木綿などの天然素材を選ぶのがおすすめです。
- 洗剤や柔軟剤が肌に残ると刺激になることがあります。すすぎをしっかり行うことも大切です。
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室内の湿度
- 特に冬場は空気が乾燥しやすく、肌も乾燥しやすくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を適切に保つことも肌の乾燥対策になります。
Q. かゆくて我慢できません。かいてしまった方が良いですか?
A. かきむしると肌を傷つけ、かゆみがひどくなったり、治りにくくなったりすることがあります。できるだけかかないように工夫しましょう。
詳しい解説
かゆみを感じると、ついついかいてしまいたくなりますが、かくことによって肌の表面が傷つき、バリア機能がさらに壊れてしまいます。すると、外部からの刺激が入りやすくなり、かゆみがさらに強くなる、という悪循環に陥ることがあります。ひどくかきむしると、皮膚が硬くなったり、色素沈着を起こしたり、細菌が入って炎症を起こしたりすることもあります。
かゆみを感じた時は、以下のような方法を試してみましょう。
- 冷やす: かゆい部分を冷たいタオルで冷やすと、かゆみを感じにくくすることができます。
- 保湿剤を塗る: かゆみは乾燥によって悪化することが多いです。保湿剤を優しく塗り直すことで、かゆみが和らぐことがあります。
- 別のことに意識を向ける: かゆみに集中しすぎると、ますますかゆく感じることがあります。軽い体操をする、音楽を聴くなど、意識をそらす工夫をしてみましょう。
爪は短く切っておき、もし寝ている間にかいてしまうのが心配な場合は、木綿の手袋をして眠るのも一つの方法です。
Q. どんな時に病院に行けば良いですか?
A. かゆみが強い、湿疹がある、長く続くなど、症状がつらい場合は、早めに専門医に相談してください。
詳しい解説
日頃のお手入れで改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、早めに皮膚科など専門の医師に相談することをおすすめします。
- 強いかゆみで夜眠れない、日常生活に支障が出ている
- かゆいだけでなく、皮膚が赤く腫れている、ブツブツができている、湿疹がある
- 皮膚がじゅくじゅくしている、液体が出てきている
- かき壊して傷になっている
- 自分でできるケアを続けても、症状が良くならない、または悪化している
- 急に全身がかゆくなった
これらの症状は、単なる乾燥だけでなく、皮膚炎や他の病気が原因である可能性も考えられます。医師に相談することで、原因を正確に調べてもらい、症状に合った塗り薬や飲み薬などを処方してもらうことができます。
自己判断で市販薬を使い続けたり、民間療法に頼ったりせず、必ず専門医の診察を受けるようにしてください。
シニア世代の皮膚のかゆみや乾燥は、適切なケアで症状を和らげることができます。今回ご紹介した内容を参考に、毎日のお手入れを丁寧に行ってみてください。そして、症状が気になる場合は遠慮なく専門医に相談してください。